0-17.後ろ恋姿

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まだ誰も来る気配のない朝の教室。

黒板と立ち並ぶ机を斜めから

まばゆく差し込む朝の陽ざし、

窓際の席。その後ろ側に

彼女はいつもいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

夏の陽差しのようにピシャンとした

無邪気な笑顔の子。

男女隔てなく明るく話す天真爛漫な

雰囲気は、それだけでも男子のお株は高かった。

 

 

 

時折り見せるお嬢様的なしとやかさも

なるほど少しだけ惹かれる部分が

あるようだった。

 

 

 

 

 

「アイツの微笑みを受けると

レジェンド(トレカの激レア)引けるぞ(笑)」

 

「なんだそれぜってぇねぇよww」

 

 

 

 

 

なんてジンクスを、当時ゲーセン通いが

流行りだった野郎共の間で

実しやかに流布されていた。

彼女からしたら可笑しすぎる

良い迷惑である。笑

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

「分かんない!(笑) 絵心なーい。w」

「分かれよ!ってかこれ絵心いらないでしょ!w」

 

 

 

2年の時。クラス替えで一緒になった。

それまで全く面識がなく、

名前を聞いてもピンとこないくらいだった。

 

 

 

友達になれたのは、

クラスを同じくしてから少し時間が

かかった。

 

 

 

ざっくり言えば2学期に入ってから。

 

 

 

その頃に席替えで近くなったことが

きっかけだった。そして、

授業中の絵しりとり選手権が流行りであり、

隣席一帯で極秘裏に行われていたこと

やはり席が近くなったことから始まった。

 

 

 

こう言ってしまっては度し難いが、

そんなことができる授業と出来ない

授業がある。

暗黙の了解である。当然、少し

ふざけても差し支えないフレンドリーな

先生の受け持つ授業のときに

それが始まる。

 

 

 

 

 

はっきり言おう、特定の先公を密かに

舐めくさってたのだ。笑

 

 

 

 

 

「こーらっ、授業中にそんなことしない!」

 

 

 

こんな生優しいお咎めなもんだから、

なるほど板書は疎かにしない程度に

生徒同士の交流ばっかりが

深まるわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時、彼女は不意に無言で

折り紙を机にそっと置いて渡してきた。

長方形を成しているが、

対角線上の二隅だけが小さく

欠けているような形をしたものは

裏返すと器用に織り込まれたもの

だった。

 

 

 

 

 

「せんまへ」

 

 

 

 

 

と、書いてあったので、

それは折り紙ではなく

手紙か何かだと理解した。

一瞬ビックリしたが、でも、

 

「ラブレターではない。」

 

直感でそう、思い込んだ。

キレイに角が重なり折り合わせた

その手紙を慎重に解くと、

 

 

 

「初めて手紙書いてみた!

読んでくれてありがとう!

部活頑張ってね、応援してる!」

 

 

 

こんなシンプルな内容だった。

 

 

 

実はこの様式の手紙は

既にこのクラスでの

手軽なコミュニケーション

ツールとして定着している

ものだったので、

目新しさこそなかった。

告白ではないことはこれにより

察したのだが、この手紙を

彼女からもらったのは、

この日初めてだった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地区連合大会出場が決定したことに

より、

より鍛錬に時間を要することになる。

早くも陸上部部長という大任を

任せれるセンマ部長は、

朝練のセッティングに、

早朝の校舎に急ぐ。

 

体育用具とユニフォーム、シューズやらで

嵩張るナイキのエナメルバックと

何かと重みのある通学鞄は

長い通学路に重ねて寝ぼけ気味の早朝の

シチュエーションでは

ごっそりとテンションを削ぎに来る。

 

 

 

駆け足で教室へ、鬱陶しい鞄たちを放って

朝練へ繰り出す時だった。

 

 

 

 

 

淡く朝日が木漏れ日から差す

窓際の席。それは自分の一つ隣の席。

 

 

 

「おはよう。^^」

 

 

 

彼女はそこにいた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です