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突然の自宅リクエストに狼狽するセンマ少年。
からかい上手の沖本さん
勝手に翻弄されにいく不器用少年の初恋最終章。
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「ねえ今日遊べる?センマんち行きたい!」
唐突なリクエストに思いっきり吃った。
「(見透かされてるのか?!)」
「(でもなんでだ?!!
それでからかわれてフラれるとか無理!!)」
コンマ0.2秒でまだありもしない
バッドエンドのフラッシュバックに
ぐわりと焦燥感が込み上げ、
みぞおちが重くなった。
のしかかる吃りを飲み込んで捻り出した、
「・・・いいけど。なん」
「OKじゃああとでね~!」
そう言っていつもの別れ道を
軽やかに駆け去っていった。
「なんでうちなんだろうか。」
それだけが疑問なはずなのに
言い表しに難しい蟠りが
喉にぐっと詰まる。
家に着いてすぐ部屋に籠った。
それから次第に、
「・・・・・・どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。」
静かに迫りくる雪崩のような動揺には
決して前向きな思考はなかった。
「最悪なケースは二人きりになること。」
この瞬間、一人の異性と空間を
共にすることへの小恥ずかしさを
まざまざと感じた他、
あることをぬかったことに気づく。
時既に遅し。
他の友達を呼ぶというリスクヘッジを
沖本さんアイスブレイク脳内ロープレに
耽るあまり完全に忘れていた。
いよいよ片想いだということが
時間とともにきっとバレてしまう。そして
きしょいだのキモい(意味一緒だが)だのって
またからかいを受ける。
冗談でもこういう時のそれは、
無駄に辛くなってしまうものだ。
「♪~♪、♪~♪~。」
想像より早くインターホンが鳴った。
「あんたかわいい友達来たわよ!」
何故かちょっとテンションが高い祖母
セツが沖本さん来訪を告げに来た。
「こんにちわおばあちゃん、おじゃましま~す!」
「はいどうぞ~^^
・・・あ、近所のおばちゃんとこ寄って
買い物行くから、
あんた家の事よろしくね?」
慣れた感じでセツと玄関で
すれ違いざまに挨拶を交わし
迎え出たその家の少年と共に
彼の部屋に差し掛かる。
「・・・お、おう。こっち。」
「知ってる、ってかなに?キモいんだけど!!笑」
「何がだよ!!」
何かと口調が鋭いこの年頃の女の子からの
ソレは、現状の彼には既に大ダメージだった。
それから自分の部屋みたいに
また慣れた感じでペコんと腰おろして
「ねえねえそれで、〇〇ちゃんでしょ?笑」
「だから!〇〇じゃねえって!!」
「は?何でむきになるの、うざい。」
「なんでって・・・。」
今更ウソがつけなかった。
「(見透かされたらお終いだ。)」
つけ入る隙を与えないことに
精一杯になる。
この時の一瞬の沈黙でさえ、
呼吸が止まるほどの圧力を
勝手に感じてならなかった。
何度も居間から自室へ
お菓子を持ってきたり、近くの自販機に
ジュースを買い出しに行ったりと
あの手この手で緩和を試みたが
どれも焼け石に水だった。
やがて重なり詰まる緊迫感が
ピークを迎える。
もういっそぶった斬られたいあまりに
彼は遂に白旗を挙げた。
「沖本は、◇◇好きなんだろ・・・?」
「はぁ?!ぜっったいない。」
「・・・そう。」
「あ、でも□□君はいいかもっ!」
「っっっ!!あ。・・・そう。」
そう、終わったのだ。
自分より仲がいいと思った
仲間の名を上げたところ、
そこまで関わりのない、しかも
あまり感情を表に出さないそいつは
いわゆるクール、スラダン流川タイプ。
別クラスの男子の名が挙がったのだ。
その選択にはセンスがあり過ぎた、
余計にリアルで仕方がなかった。
自ら堰を切って望んだはずの
結果なのに、
みるみる血の気が引いていく、
全身の脈が遅くなったのが分かった。
終わったのだ。何もかも。
もう、こうなるとやることは一つ。
この先は生き延びて汚名を
雪がんとする負け戦に腹を括る。
自分の意中であったということを
なかったことにすることを選んだ。
よもやいっそう悟られまいと
自分の顔が見えないよう
さり気なく少し背を向け俯いた。
「・・・もう分かってるでしょ?」
「何がだよ。」
「さ行とか行っ!!!!!」
瞬間、彼女の上がりかかった声が
静寂を切り裂いた。
どれくらいの長い沈黙だっただろうか。
また何かを取りに行こうと部屋を
後にしようとした小さな背中を
引き留めた。
「・・・え?」
「えじゃない!バカなの?!!」
「いやだって、なにそれ?!」
「ほんとバカ!。。。」
「・・・さしすせそ、かき・・・?ぅえ?!」
「ホントいい加減にして!!(バシッ)」
「いてっ。」
結局一歩も踏み出せなかった。
キズつくことを恐れたからだ。
「自分から」なんて、
僕は君に似合わない。
こんなに近くにいるのに、遠いと感じてた。
そんな逃げてる自分に一喝される。
本当はそんな距離なんかなかった。
自分で作ったものだった。
ふり絞って、意を決しても、
きっと僕でも同じ表現をするだろう。
たった二文字は最もシンプルなのに
他でもない、最もなのだから。
「センマは。。。?」
少し弱く彼女が問いかけた、
これが全ての答えだった。
盾にしていたあらゆる気後れも
力を失っていく。
ようやく彼女が
言わんとしていることが
分かってしまった。
瞬く間に顔面に血が集まって、
視界がぼやける。熱を帯びる。
これまで感じていた距離が
いっそう一気に近くなって
もう振り向けなくなる。
「一緒。」
「そーゆうのうざい。」
「さ行とか行って、逆になっt」
「好きってことでしょ!!」
「っっっ!!!!!」
「・・・。」
「・・・うん。」「あたしもだから。」
その後は何を話したかな・・・。
このあとすぐ友達が家に遊びに来てたな。
だから告白した後に気まずくなるとかは
別になかった、助かった。笑
帰りは途中まで見送りに行った。
やっぱり別れ際は惜しかったのかな?
学校でまた会えるのに。(笑)
それから彼女が本当の意味で
彼女となったこの時から少しだけ、
実感が伴うまで時間かかった。
その点やっぱり沖本さんは
大人だった。
振る舞いはいつもと変わらないし、
慣れた感じでプリ機操作してたし。
(プリクラって今日日聞かないな。笑)
こうしてどこまでも鈍い男は
どこまでも彼女にリードをさせるという、
男気株価ストップ安まで下げるに
至っての・・・
初恋は大成功になりました。
花冷え、肌寒さがまだ残る
小6なりたての・・・
わりと早めの青すぎる春のお話しでした。
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ちゃんちゃん。♪(Fin…)
余談:
沖本さん(仮名)は現在は素敵な方と結婚され、
そして素敵なお母さまになってます。
昔から見た目が変わらないからびっくり!!
・・・まあそんなものですよね。^_^;
差し出がましいですが、どうか末永くお幸せに!
セツ、空気を読む。
今思い返すと、あれは女の勘って
やつなんでしょうね。(笑)