【0-9.抑留】より、
一週間ほど、祖父は口を聞かなかった。
祖母は、
「アンタが悪い。仕方がない。」
恐らくそう言うしかなかったのだろう。
この理不尽を飲むしか選択肢はなかった。
嘆いても訴えても、父でさえ、
聞くだけで無駄だった。
この時以降、母が頻繁に平塚の実家に
顔を出すようになり、
休日のその度に私を連れて行った。
「明日は我が身。」
それどころが息子が先に
体罰に処された。
案じて実家に帰ることも視野に
入っていたのであろう。
だが、そんな心配を余所に
別の問題が起こることになる。
2002年、小学4年、1学期の後半。
黒い鉄球のような感覚が
胸のあたりにいつもあった。
教室の廊下側にある掲示板に
クラス全部の班の割り当て表が
画鋲で留められてある。
友達の名前と写真が貼ってあった。
黒い鉄球のような感覚が
胸のあたりにいつもあった。
モノクロに笑うみんなの写真。
誰も庇ってくれやしない
休み時間。
彼の名は中田君。
廊下側端の一列、
一つ前の席に座る、
いじめっ子。
話せばろくでもないことが
返ってくる。
チビのわりに不敵なにやけ面が
似合うその彼に振り向かれるたびに、
人差し指が突き刺さるほどに突っ込み
耳を塞いでいた。
「5年生のクラス替えまで、あと◯◯◯日。」
本気で数えた日数は、中田君とのクラス別を
保証するものではないと気が付いたその日、
給食が食えなくなった。
この時世界がモノクロに見えていた。
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次回、王朝再び、センマに牙を向く。
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