【0-4.スケープゴート】より、
幾度と不当な糾弾を受けた母。
ただ、一見して理不尽とも思える鉄の掟が
作られたのは、恐らくこの王家の繁栄及び、
目上を労った養老を目的とするものである。
故に、
決して母のような、この家にとっての
反逆因子を撲滅するために予め作られた法
とは考えにくいものだった。
そう、時としてこの格式に守られることも
恐らくあったのであろう。
一家の大黒柱ともとれる父を失うリスクは
この小さな王朝には極めて大きすぎたため
結局は追放の裁きを受けないという
結末を辿ることになった。
それを分かってか否かはともかく、
こうして耐え忍んできた母にも
遂に転機が訪れる。
父が昇進。
支店長任命がようやく実現となった。
そのため、ある一つの支店を丸ごと
任されることのなったのだ。
勤務地、長野。
よって人事異動。
それは私が小学生になって
間もなく、11月になって
初めて転校を経験する
きっかけになった。