千馬の章 序章 兵どもが夢の跡

2017年 12月 横浜みなとみらい

 

これは今からおよそ数年前の話。

ピカピカの眩しい坂道を

汗一滴もかかずに昇る、

それはもう順調な出世だった。

 

 

桜木町駅から建物へ長く伸びていく動く歩道は、

僕にとって勝者の花道だった。

新調したフルオーダーのスーツで

肩で風切って歩いていたよ。

 

 

 

 

歩道を渡った先に高くそびえたつ

ランドマークタワーの高層階で

勤めること。パノラマの窓から

煌めき溢れんばかりの夜景は、

25歳の若さで此処にこれたことが

自分にとって最高のステータスで、

証券マンから同じ金融業に

引き抜かれて転職したこの時、

僕の人生は早くも最高潮を迎えたんだ。

そう、僕は一度、成功したんだ。

キレイでしょ?こんなのが毎日だよ。

さすがに暫くの間は飽きることなく

うっとりしてた。

いつの日かこんな景色が当たり前のような

環境を手に入れられる。

僕はそんな人生を歩むって

完璧なイメージをしていた。

 

 

 

独身25歳、平均月収50万円。

賞与100万余りをもらったこともある。

誰もが一度は聞いたことのある

金看板を誇りに

エリート街道まっしぐらだった僕は・・・

途轍もなくギラギラしていた。

 

 

 

銀座や六本木、横浜とか川崎に

行きつけのBARがいくつもあって、

中でも気に入ったとこでは

毎日浴びるほど高い酒を飲んだ。

この時の趣味はウイスキー探求。

 

 

 

グレンモーレンジーシリーズ、

ポートシャーロット、

カバラン各種、オクトモア。

とにかく好きなだけ飲んだなあ。

夕飯だって毎回外食。

20ちょいのにいちゃんには

背伸びしたところばかり行っては

値段も見ずに頼んでた。

それでその後、また行きつけのBAR。

週末は朝まで高級酒浸り。

そんな毎日だった。 

 

 

 そういえば、

葉巻もやってた。

 

 

 

 

ってなると、

いい女(表現が申し訳ないが。)

って華やかな方々も

度々僕のことを囲んでくれた。

「カネは僕が想う平和さえ買える。」

そう実感した。

 

 

とにかく全てが順調だった。

(↑大学の友達)

友達だっていいヤツばっかり。

 

 

 

幼少期から友人には恵まれ続けて、

僕はそんな多くの友人たちに

勝手だが恩返しがしたい、

「僕がいてよかった、楽しい!」

そう思ってもらいたい夢があって、

直ちにタワーマンションに引っ越す。

 

毎週友達呼んで、

好きなだけ飲んで食って遊ぼう。

そんな計画もあったんだ。

 

 

 

 

 

そんな野心と希望に満ち溢れていた。

あと一歩だった。

 

 

 

 

 

それから

2020年8月。

 

 

 

 

いよいよ後ろ姿の夏の空は、

静かに晴れ渡っていて

また静かに覆い被さる宵は

不安を吹き飛ばすように

言い聞かせながら越えていき、

そしてまた夜が明ける。

 

ゆっくりと、されど留まることを

許さずに昇る日差しは

新たな一日の爽やかと、

また来たる日々の虚しさを

等しく照らしてくれてしまう。

 

 

 

成績や給料が、目標の高さが

正義だったあの頃の僕は

もう、いつの間にか

いなくなっていたんだ。

 

 

 

 

 

バイト君28歳。貯金なし。

何もかもが、全てが変わった。

早朝、トラックの運ちゃんをやっている。

 

 

 

 

 

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もはや当時の華美な喧噪や想いは

久遠の過去に葬り去られつつあるのです。

きっとこれでもいいのだろう。

それでもどうせ一度きりならば、

人生を最高のドラマにしたいと願っている。

ここから逆境の旅が、今始まっていく。

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